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執筆者の写真petomoni

petomoni(ペトモニ)寄付取材 Vol.2

更新日:2022年8月30日

公益社団法人 アニマルネーション

業界外も巻き込むしかけで 

〜日本の動物福祉を世界トップレベルに〜


petomoniの活動の中で、何度も耳にしてきた「アニマネーション」。動物福祉団体を支援できる「日本初のオンライン寄付サイト」を運営する、公益社団法人だ。動物福祉のためにがんばる人を、支援したい人とつなぐサイト運営の在り方は、ペットの撮影会を通して動物愛護団体の支援を行ってきたpetomoniのアプローチと近いのではないか。そう感じた高野とスタッフ天野が、南青山でアニマルネーション代表理事 西平衣里(にしひらえり)さんと浅井暁子(あさいあきこ)さんにお話しを聞いた。

 

命を救う仕組みが必要だ


高野: petomoniの活動を始めて動物保護の現状を見聞きするうちに感じたのは、気持ちだけでは続かないということでした。私たち自身、続けるための仕組みについて常に考えてきました。アニマルドネーション(以下、アニドネ)さんは、寄付サイトをはじめ、実にさまざまな仕組みをお持ちで驚かされます。そもそも、どのようにして活動を始められたのでしょうか。


西平さん(以下、敬称略): もともと動物が好きでトイプードルと暮らし始めたのですが、とてもお腹が弱い子で。フードや病院などを調べているうちに、殺処分が多いなど、日本の動物の現状を深く知るようになりました。そこから、セミナーに行ったり、都の施設に見学に行ったりして、個人的に少しずつ知識を広げていったんです。都の施設では、飼育者のおじいさんが入院することになって連れてこられたキジトラの猫に会いました。とても健康そうで、大切に育てられてきたことが一目でわかりましたが、この子の行く末を訪ねると「大人だから無理かな」と。大きなショックを受けました。健康な成猫が処分されるなんて、おかしい。命を救う仕組みが必要だ、と強く感じました。


天野: そこで動き始めたんですね。

対談は和気あいあいと進んだ(左から浅井さん、西平さん、天野、高野)


西平: 初めはとにかく情報を集めようと考えていました。かつて勤めたリクルートでは結婚情報誌『ゼクシィ』の制作に携わっていたので、「情報が集まると業界が変わる」とわかっていました。良い情報が集まることでユーザーの思考が変わり、新しい概念や文化がうまれることを目の当たりにしてきたので、とにかくリサーチして、良い情報を集めたサイトを作ろう、と。


調査していく中で、自分の生活を切りつめて、熱心に目の前の命を救う保護活動をしている方や団体が多くあることを知りました。一方で、寄付をしたいけれどどこにしたらよいかわからない、という方もいる。その両者を結び付ける形で、動物福祉をしている方々の支援をできればと考えて選んだ手段が、当時日本にはなかった「オンライン寄付サイト」でした。このサイトを基盤に情報を発信したり、セミナーを行ったりもしています。コツコツ続けて、丸8年が経ちました。


天野: 8年続けるというのは、すごいことですね。現在、こちらにはどれくらいの人が関わっているのでしょうか。


西平: 経営メンバーは私と浅井を含めて7人で、うち6人はダブルワークの形で関わっています。人件費に回るお金は実はほとんどなく、ほぼボランティアです。それぞれITやウェブなど何かしらの専門家で、この現状を何とかしたいという「動物福祉オタク」です(笑)。 今はオンラインでも会議ができるので、無理のない形で進めています。


高野: 強力なメンバーですね。


西平: 加えて、ボランティアとして50人ほどの方に「クラブアニドネ」のチームメンバーとして参加いただいています。この方々も、獣医さんからライターさんまでそれぞれに専門性が高く、非常に強い気持ちでパワフルに動いてくれています。

クラブアニドネのみなさん 提供:アニマル・ドネーション


海外との違い


浅井: 活動報告「animal donation magazine」も、メンバーが作ってくれたものです。インタビューや認定団体さんの紹介、さらに普段なかなか知ることができない各国の情報などもメンバーのネットワークですくいあげています。海外の犬猫との向き合い方を知れば知るほど、日本の難しさを痛感します。


西平: スイスで訪れた保護施設で、「日本では、どれだけ動物のメンタルを考えていますか?」と聞かれました。スイスでは、集団で暮らす動物は一匹で飼ってはいけないという法律もあるくらい、とにかくサイコロジカル(心理的)に動物の気持ちを汲んで活動しないといけない。一般の人も「僕たちの国は、世界一動物と環境にやさしいんだ」と、みんな誇りを持っているんです。それと比較すると、日本は犬のリードの引き方一つ見ても「まだまだ」と感じます。


高野: 各国の状況を見て気づくこともありますね。日本の動物福祉の状況を向上させるにはどんなアプローチをするのが良いとお考えですか?


定期的に発行される活動報告「animal donation magazine」 浅井: 意識、認知ではないでしょうか。私たちのような“動物オタク”が当然のように知っていることでも、関心の低い方は知りません。保護犬や保護猫についても、その存在をテレビで見てようやく知った、という方も多いのではないでしょうか。そこからアクションに移るとなると、まだまだ遠い話です。「かわいい」と思って動物と暮らし始めたものの、動物福祉を理解して人間側が配慮できているかというと、まだ課題は多いように感じています。


周囲を巻き込むしかけ


高野: アニドネさんは、発信力もありますね。


西平: 動物福祉に強い関心がある方ならアニドネのサイトまで検索して来てくださることもあるでしょうけれど、それは動物を飼っている方の数パーセント。飼っていない人も合わせた全体から見たら、ほんとうにわずかです。


関心を広げるためには、周辺に目を向けることも必要です。アニドネでは、これまでに映画とコラボレーションをしたり、Amazonさんの「動物保護施設支援プログラム」に協力をしたりといった取り組みを行ってきました。ウェブで簡単に参加できる「動物福祉検定」も考えています。全く興味がない人は難しいけれど、知ったらアクションをしてくれそうな人にリーチできる方法を考えています。


高野: 現在動物を飼っている人以外も巻き込んでいくことが必要ですね。

代表理事の西平さん(右)と現在経理に携わっているという浅井さん(左)


西平: 実は、私たちにいただく寄付の8割が企業からのものです。日本の企業は寄付に慣れていません。犬や猫に関する業務を行っているところでも、「寄付は初めて」という状況です。ですから、こちらからCSRにつながるという視点も含めて、寄付の提案をどんどんしていく。NPOらしくないと言われますが、そこは私たちの強みとしてやっています。


高野: 一人でできないことは手をつないでいかないといけない。そのときには、企画、提案書で理解してもらうということが大切ですね。自分たちの強みを理解した上で、どこと連携すればWIN-WINになれるか。


西平: そうですね。アニドネには情報が集まるので、企業さん同士をつなぐこともしています。企業にとってもイメージアップになり、社会貢献につながるというベネフィットがありますから。動物業界以外を巻き込むことも大切だと考えています。


レガシーギフトを日本に


高野: 私たちの撮影会では、観に来る人たちとの接点を持てること、動物の話ができることを大切にしています。直接会うので、厳しい意見も含めていろいろな反応がありますが、それらを受け止めつつ、私たちの専門である「良い写真を撮る」ことでお客様にとっての価値を感じてもらえればと思っています。


西平: その点では、私たちは「寄付」の部分をしっかりやっていきたいと考えています。そこで力を入れているのが「レガシーギフト(遺贈)」です。アメリカやイギリスでも、毎月寄付をするという人は、それほどいるわけではありません。でも、自分が遺すものを社会で役立てたい、中でも動物に役立ててほしいという意識が高い。これを日本でもあたり前にしていきたい、と。動物が後に遺された時には、そのお金で新しい飼い主を見つけてもらえるような仕組みも作りたいと思っています。


浅井: 断捨離で出た本やいらなくなった服などを送ると、その査定額が寄付になるという方法も用意しています。お金の寄付はハードルが高くても、こうした形だと社会貢献しやすいですよね。


高野: たくさんのオプションがあるのですね。私たちも常に次のステージを考えているので、大変勉強になるお話です。


教育の必要性


高野: 動物保護の情報に触れることは増えてきたものの、動物を飼っていない人や関心が低い人への認知はなかなか難しいですね。


西平: 犬や猫を見て「可愛い」と思う子どもが減っている、という話も聞きます。小学校にセラピー活動に行きたくても、アレルギーへの配慮や、怖がる子どもがいるなどの理由で断念せざるを得ないなど、触れ合える機会を作るのも難しい時代です。


高野: 私は「動物福祉には、教育の力が必要だ」と思っています。私たちには、スタジオタカノとして学校行事ごとに写真撮影をする仕事もあります。外部の者としては最も多く学校に出入りし、先生とのつながりも強い。そこで、子どもたちの理解が深まるようなことができたら、と考えています。近隣にある国立の附属小学校でも第三者が教育に関わる仕組みづくりについて考えていると聞きました。学識的な視点、天野の持っている動物のプロとしての視点を携えて、教育の面でも関われないか、と考え始めているんです。


西平: 教育はとても大事なことだと思います。動物が人にとって良い影響を与えるというエビデンスはたくさんあります。小さいころから動物に接していた人はノンバーバルコミュニケーションにたけるという研究もあります。ぜひその部分はpetomoniさんにお願いしたいです! 


インフラを変えたい


天野: これからアニドネさんは、どこを目指していかれますか?


西平: 動物と人間の真の共生ですね。本気で変えねばならないと思っています。


高野: 動物との共生として、理想的なイメージをお持ちでしょうか。


西平: 現状として、そもそも一緒に住める住居が少ないですよね。マンションでも一緒に住むための規約がたくさんありますが、動物のことをより理解して決まりを作れば、人も動物もストレスが減るのでは、と思います。ヨーロッパでは、パートナーである犬と公共交通機関を利用することや、ホテルやレストランなどで共にくつろぐことに寛容です。そんな風に互いが心地よく暮らせるように、社会的なインフラを変えていきたいです。今の日本では、犬や猫たちは「家族」にはなっているけれど、「社会の一員」にはなれていないと思うのです。「社会の一員」になることが、動物福祉の真の形ではないでしょうか。


浅井: あきらめないでずっと一緒に過ごしたいですよね。


天野: 確かに、電車や飛行機では手荷物扱いですもんね。


高野: 一緒に住める家が少ない、というご指摘に「ハッ」としました。確かに、そのために飼うことをあきらめ、手放さざるを得ない人もいます。いろいろな視点から考えていく必要がありますね。関心がない人にとっては、共生の中で糞尿や毛、臭い、などのネガティブなイメージがあると思うんですよね。そこをどうクリアするのかを提案できないと、無関心層は変わらないですね。


西平: つい最近、まさに糞尿や病気など、飼育上の難しさを取り除いたロボット型ペット「LOVOT(ラボット)」を見に行ったんです。触れると温かくて、声に反応してアイコンタクトをします。人間には「愛すべきもの」が必要なのだそうですが、さまざまな事情を持った人にとってこの「LOVOT」は有効なのかもしれない、と感じました。命ある生き物は、きちんと世話ができて、知識を持った、「ちゃんと飼える人」が飼わなくてはいけません。動物と人間が共に暮らす社会について、いろいろな視点からみんなでしっかりと考えていく必要があると思います。


高野・天野: 今日はどうもありがとうございました。


前列左から:浅井さん、西平さん 後列左から:高野、天野

 

終始柔らかで笑顔の絶えないお二人だったが、その根底には動物への深い愛情と、現状を変えたいという熱い思いが流れていた。ゴールに向かってあらゆる方法を探り、人と人を結び付けていくパワーをもってすれば、動物福祉のインフラを変える日も近い。そう感じさせられる取材だった。対談後、「アニマルドネーション」さんに『petomoni(ペトモニ)』から寄付金をお渡しした。

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